イベントレポート「研究公開企画みらぼ」

今回、第67回京都大学11月祭の本部企画として2025年11月22日(土)から11月24日(月)の3日間、「研究公開企画みらぼ」を開催しました。

「研究公開企画みらぼ」とは、京都大学の先生方をお呼びしてポスターセッションを行っていただくという企画です。

文理問わずさまざまな分野の先生方が参加してくださったこともあり、多種多様な研究内容が発表されました。

今年が初の開催となりましたが、延べ300人以上の方にご来場いただきました。



11月22日(土)は「2050年の豪雨制御ー洋上カーテンの不思議」というテーマで防災研究所の山口弘誠先生と、仲ゆかり先生が、「アフリカの生活道路建設の技術開発と運用に関する学際的研究」というテーマでアフリカ地域研究資料センターの金子守恵先生と、高松奈央さんが発表してくださいました。

山口先生の研究は、昨今の深刻化している大雨被害の対策として、雲それ自体の規模を抑えるにはどうすれば良いかというものです。

大変興味深かったのは、タイトルにもある通り洋上に巨大なカーテンを設置し、風の強さを抑え雨の発生源である雲それ自体の強さを抑えるというものでした。人の力は天気すらも制御できるようになったのかと感銘を受けました。

また、実際に洋上のカーテンとはどんなものか、どれほど効果があるのかを、2メートルほどある風洞で実験していただき、その効果がはっきりとわかりました。


金子先生の発表は、アフリカの土壌を保水性のあるものに改善して、雨天後も車が走れる状態にするという、長年行われているプロジェクトについてでした。

このプロジェクトの重要な点は、アフリカの地域にはコンクリート舗装する資金的余裕がなく、安価な方法での改善が求められているということでした。

その解決案は、アフリカでも簡単に入手することができる自然由来のセルロースなどを現地の土に混ぜるというもので、実施した結果土の保水性を上げることに成功しました。今でもその技術を使って各地の道路を舗装しているとのことです。

今回の発表の場にもアフリカの土と自然由来の物質、そしてその混合物の実物を用意していただき、実際にどれほど土壌成分が変化するのか見て、触れて、実感することができました。



11月23日(日・祝)は「ゲームを通じて考えるアフリカ熱帯林の狩猟活動の未来」というテーマでアジア・アフリカ地域研究研究科の赤岡佑治先生が、「『持ち家志向』はどのようにしてできたのか?ー戦後日本社会を例に」というテーマで文学研究科の佐藤慧先生が発表してくださいました。

赤岡先生の研究は、カメルーンの部族の狩猟採取活動と環境保全を両立する方法を考え、その管理方法を学ぶ手段としてゲームを用いるというものです。

カメルーンでは、国家が部族の住んでいる地域に国立公園を作って、狩猟を制限してしまうという問題が発生しました。その結果住民との対立が生まれてしまい、その解決策として住民が野生動物を管理するという方法が提案されました。

しかし管理の経験を積んでいない部族には、国家としても管理を任せられません。

そこでゲームを使って管理方法を楽しく学び、現実に活かすというのが赤岡先生の研究です。

赤岡先生によれば、ゲームの結果、住民同士で協力して管理できた場合が、動物の減少率が最も低かったことがわかったそうです。

赤岡先生はこれらを踏まえて、どのような方法が管理に最も適しているのかということも研究していらっしゃいます。

ゲームという親しみやすい内容から学習、そして課題解決に繋げる方法は、非常にユニークなアプローチだと感じました。


佐藤先生の研究は、日本人の持ち家志向の変容を時代の社会状況からの視点で分析するというものでした。

持ち家の比率自体は高度経済成長期に急上昇しており、経済的豊かさが持ち家への需要を高めたというのはおそらく正しいですが、欲求を高めたかというとそうとも言い切れません。

なぜなら日本人の持ち家志向が急上昇したのは戦時中、そして戦後以降だったからです。

これは戦禍で家を失い、路上生活や狭い空間での共同生活を余儀なくされた人々のプライベート空間への希求なのではないかと、先生は考えていらっしゃいます。

今はまだ研究段階であり、世界各国の持ち家志向の変容などを調べて、自分の仮説を確証に変えるために様々なデータを分析していらっしゃるとのことです。

今では当たり前になっている社会通念の起源を考え、複数の時代背景を鑑みて理論を組み立てている研究の視点は、自分の常識を改めて見つめ直す機会を与えてくれました。


11月24日(月・祝)は「幸せな『人生のしまい方』って?」というテーマで文学研究科の児玉聡先生、荻野琴さん、Nam Seungminさん、立場貴文さん、鈴木英仁さんが発表してくださいました。


児島先生たちの研究は、現在急速に進んでいる高齢化社会の中で起こる様々な問題を提起し、その解決策の一つとして終活の大切さを説くというものでした。

これまでは多くの場合寿命で亡くなったとしても家族が死後の手続きをしていたのですが、昨今では家族というものの役割が変容していることや、高齢の方の単身率が増加していることなどが理由で、それらの手続きが困難になっています。

そのためこれまで以上に終活の重要性が高まっているのです。

多くの高齢の方が終活の重要性には気づいており、いつかしなければいけないと考えている一方で、実際に行動に移している人は半分にも満たないのが現状です。

これは多くの人が怠惰だというわけではなく、人間の性質として直感的に利益にならないものにはやる気が出ないというものがあるからです。

死後のためのことであったら尚更です。

そのため先生方は、少しでも終活を身近に感じてもらうために、カードゲームによって死生観を考えるといった様々なアプローチについても考えていらっしゃいました。

いざ自分が死んだ時に何を大切にするのか、何をしなければいけないのかということに向き合うことができる貴重な時間でした。

この3日間、大変多くの来場者の方が先生方の発表を熱心に聞いてくださいました。

少しでも「研究」というものの興味深さを知り、身近に感じていただけたなら嬉しい限りです。

また、イベント期間中はもちろんのこと、半年間にわたり準備の各段階で多大なるサポートをしてくださったぶんこもフェローの皆様、そして初の試みである本イベントの趣旨にご賛同いただき、ご多忙の中発表してくださった先生方に、心より感謝申し上げます。


「研究公開企画みらぼ」が、11月祭の来場者の皆様にとっても、京大の最先端を走る研究者の皆様にとっても、生き生きとした交流の場となっていれば幸いです。

PROFILE

京都大学11月祭

11月祭事務局員

西日本最大規模の学園祭である京都大学11月祭の準備と運営を担っています。 11月祭に出展されるさまざまな企画をサポートするため、1年間を通じて活動しています。